ペプチドマイクロアレイ、PepTenChip®の疾患モデル唾液検体を用いた歯周病検査への応用例
ハイペップ研究所が創業以来取り組んできた新規原理に基づくバイオチップ、PepTenChip®の歯周病検査への応用に関してまとめた。歯周病は、細菌感染により引き起こされる口腔内の炎症性疾患である。比較的軽度な歯肉炎から重度の疾患である歯槽膿漏までが含まれる。歯科臨床領域では、成人の80%が歯周病に罹患しているとされ、「生活の質」の観点で重要な疾病である。これまでの研究で口腔内に存在する数百種類の細菌により引き起こされることが推定されているが、精確な原因の解明には至っていない。歯周病の検査方法として、プローブとよばれる専用の器具を使用し、歯周ポケット深さの測定や、プローブによる歯肉圧迫に対する易出血性の判定、目視による歯肉の炎症状態判定、X線による歯槽骨レベルの判定等が行われているが、ほとんどが検査者の主観に依存する検査項目とされ、経験や熟練度に大きく依存しているのが現状である。当該研究では、検査者のスキルに依存せず、客観的かつ簡便に口腔衛生状態を検査するバイオチップの開発を目的とした。現役の歯科医師とともに実験に使用する検体として疾患モデル唾液を作製した。3ブロックをカルボキシル基で修飾してあるアモルファスカーボン基板をマレイミドカプロン酸で誘導体化し、ここにマイクロアレイヤー(NanoPrintTM LM-60)を用いて検査用捕捉ペプチドプローブをアレイ化し、歯周病検査チップを作製した。このチップを用いて疾患モデル唾液の蛍光強度変化を測定、統計解析を行った。解析の結果、検体に含まれるタンパク質の違いによる分類が可能であり、当該検査チップが歯周病検査に有用であることが示された。捕捉分子ペプチドの解析から検査に有用なペプチドの構造を同定した。ペプチドマイクロアレイ、PepTenChip®は、特定のタンパク質と相互作用を起こすペプチドを網羅的に解析することに適しており、アレイ化するペプチドの種類を最適化することで、血液、尿、脳脊髄液など様々な体液検体に対応したチップを作成することができる。作製したデータベースの活用でより迅速かつ精確な診断が可能になると考えられる。
原著論文
Tominaga, Y., Usui, K., Hirata, A., Ito, H. and Nokihara, K. (2018) Bioorganic & Medicinal Chemistry, 26, 3210-3216.