①PepTenChipの基礎知識
マイクロアレイとは
マイクロアレイは、DNAやRNA、タンパク質、ペプチドなどをガラス板上に高密度に配置し、数千〜数万の分子情報を一度に解析できる技術です。
基板上には「プローブ」と呼ばれる分子が固定され、特定の標的と結合することで反応を検出します。1991年の登場以来、マイクロアレイは感染症やがん研究、臨床検査など多くの分野で活用されており、COVID-19ではウイルスのエピトープ解析にも用いられました。
現在、一部は保険適用され実用化が進んでいますが、RNAを用いた形式などは研究段階にあります。

弊社のPepTenChip®では、アモルファスカーボンを素材とする基板上に、蛍光標識された構造ペプチドをプローブとして高精度に固定化しています。
これにより、より安定かつ高感度な解析が可能となり、研究や検査において有用なデータを提供します。
基礎原理

PepTenChip®は、タンパク質の翻訳後修飾や三次元構造に着目し、相互作用を模倣した構造ペプチドをプローブとして用いることで、高精度なタンパク質検出を実現する次世代マイクロアレイデバイスです。
蛍光標識ペプチドにより相互作用の変化を可視化・定量化し、「Protein FingerPrint(PFP)」としてカラーバーコード化。これにより、複雑なタンパク質情報を直感的かつ網羅的に解析できます。
さらに、アモルファスカーボン基板を使用した高密度アレイ印刷技術と小型蛍光検出装置により、ナノグラムレベルの試料から数フェムトモルの高感度検出が可能。感染症などの現場でも応用できる、革新的なバイオセンサープラットフォームです。
②従来技術との違い
従来のマイクロアレイ技術は、特定の目標物質(ターゲット)があらかじめわかっている場合に使われることが多く、その検出方法はサンドイッチのように抗体を使って信号を増やす仕組みです。
つまり、探したいものが決まっていないと、この方法では見つけにくいという問題がありました。
一方で、私たちが開発したPepTenChip®は、あらかじめ何があるかを知らなくても、タンパク質の形やその働き方の変化を広くとらえることができます。
特別な光るペプチドを使って、タンパク質の状態の変化を目で見えるようにし、これまでの技術では見逃されていた情報も簡単に手に入れられます。
さらに、少ない量の試料で済むため、検体が限られる病院などの現場でも役立つ技術です。
PepTenChip | PepTenChip | ELISA | |
---|---|---|---|
基板 | カーボン基板 | プラスチックやガラスの基板 | マイクロプレート |
プローブ分子 | 蛍光標識ペプチド | 一本鎖DNA | 抗体 |
検体 | 脳脊髄液、血清などの生体成分 | total DNA | 脳脊髄液、血清などの 生体成分 |
測定原理 | プローブと生体成分の相互作用 | DNAプローブ | 抗体抗原反応 |
測定方法 | 蛍光強度変化測定 | 蛍光, 安定同位体 | 蛍光測定 |
特徴 | 検体に含まれる分子の 網羅的解析が可能 | 数千の遺伝子の発現量を一度に解析可能 | 抗原抗体反応なので感度が高い |
利点 | 検体を前処理なく測定できる 幅広い検体に適用できる | 多数の遺伝子を同時に 解析できる | 高感度・高特異性で定量可 |
欠点 | 検査には事前データが必要 → データを蓄積しておく | 未知配列は検出できない | 未知の成分には対応不可 |
③利用するメリット
1.原因不明の疾患特定へ期待
PepTenChip®は、これまでの抗体に頼る検査方法とは違い、調べたい対象があらかじめ決まっていなくても、タンパク質の形や相互作用の変化を捉えて検出できる技術です。これにより、未知の物質や原因がわかっていない現象の研究にも柔軟に対応できます。
2.高感度かつ定量的な検出が可能
蛍光で標識されたペプチドと独自のチップ設計により、ナノグラム単位のごく少量の試料からでも、数フェムトモルという非常に微量な分子を高感度かつ定量的に検出できます。少量のサンプルで済むため、貴重な試料を節約しつつ正確なデータ取得が可能です。
3.メンテナンス不要
PepTenChip®は小型でメンテナンスがほとんど不要な装置で構成されており、複雑な前処理や大掛かりな機器を必要としません。これにより、実験だけでなく、フィールド調査や迅速なスクリーニングなど多様な環境での活用が容易です。
4.直感的なデータ解釈が可能
検出結果は「Protein Fingerprint(タンパク質の指紋)」としてカラーバーコード化されており、視覚的にわかりやすく、専門的な知識がなくてもデータの傾向をつかみやすい点も大きな特徴です。
5.多分野への応用に期待
この技術は、基礎研究、創薬開発、環境分析、バイオマーカー探索、品質管理など、多様な分野での応用が期待され、未知のタンパク質の挙動解析や新規発見の支援に役立ちます。